三月二日  はれ






 今朝、ユキムラのお母さんが尋ねてきた。何でも、朝ユキムラに渡そうと思っていた品物があったらしいのだが、何時もの調子で飛び出して行ってしまい渡すことが出来なかったそうで、だから代わりに届けてほしい、と頼まれた。毎度のことにもう呆れも感じない、嫌な達観が俺の中にあった。


 何はともあれ、鞄に届け物を丁寧に入れた後、母さんに見送られてワカバタウンを後にした。別に会えなくなる訳でもないのに、少し涙ぐんでしまった。


 ヒデヨシはボールの中にいるよりも、外で動き回る方が好きなようなので、出来る限り外に出させてあげることにした。ストレスで十円ハゲが出来て、更にひっかかれたらたまらないし。


 コトブキシティに向かう途中、202番道路で会ったヒカリちゃんにポケモンの捕まえ方を教わった。……のだが、可愛い笑顔で「体力を減らした方が捕まえやすくなるよ!」と言われたときは、背筋を薄ら寒いものが走った気がした。


 とりあえず、早速教わったとおりにポケモンを捕まえてみた。コリンクという、電気タイプのポケモンだ。ニックネームは、初めて捕まえた電気タイプのポケモンだから、エレキテルを始めて修理した平賀源内にちなんで、ゲンナイと名づけた。ゲンナイと呼んであげると、器用に宙返りをしてくれたので、気に入ってもらえたのだろう。


 コトブキシティに着くと、早速ユキムラを発見できた。勝負を挑まれるが、その前にお母さんのことを話して、少しは落ち着いて行動しろとしかっておいた。あまり効き目は無さそうだったが、「これからは気をつけるぜ!」と言われた手前、それ以上は言えなかったので、届け物を渡した。


 中身はタウンマップが二つだったらしく、二つあってもしょうがないと一つ渡された。タウンマップを二つ入れる意味なんてないから、もしかしたら、それは元々俺のためにユキムラのお母さんが入れてくれたのかもしれない。大切に使おう。


 戦いを挑んだのも忘れてユキムラは去っていった。時間も時間なので、今日は宿を取って休む事にした。布団の上でヒデヨシとゲンナイがじゃれあっている。シーツだけは破らないでほしい。



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