二月二十八日 はれ






 今日から日記を書こうと思う。毎日書けるか分らないが、出来るだけ長く続けたい。


 今日、ナナカマド博士からポケモンを貰った。事の始まりは、コトブキテレビの『ナナカマド博士に聞く』という特番を見終わったとき、幼馴染のユキムラが飛び込んできて、


「ナナカマド博士にポケモンもらいに行こうぜ!」


 と叫んだことだ。ユキムラも同じテレビを見て、今言ったとおりのことを思いついて俺を誘いに来たんだろう。その突拍子のなさはもう慣れたけど、ユキムラは初対面の子供に『ポケモンください』と言われて渡すような人がいると思っているんだろうか。十年前からの向こう見ずも治ってないし、色々と心配だ。


 その後、俺が口を開く前に部屋を飛び出していったユキムラを追いかけたんだけど、町の外で待っていると言っていたくせにまだ部屋で準備をしていた。家から飛び出してきたときの正面衝突は痛かった。今度寝ているとき鼻にわさびを塗ってやろう。


 ナナカマド博士は隣のマサゴタウンに住んでいて、向かうには草むらを突破しないといけないのだけど、「ポケモンに会っても突っ切れば平気」というトンデモ理論を展開してくれたユキムラが、止めようとする俺を気にせず草むらに突っ込もうとした。ナナカマド博士と会ったのはそのときだ。


 ユキムラを止めたナナカマド博士に、何故か俺も一緒に説教されてしまったが、ユキムラが危険な目に遭わなかったからいいやと思った。


 その後、ポケモンは好きかと二度ほど聞かれた。ユキムラも断言していたが、草むらの件を突っ込まれてどもっていた。すると、


「じゃあ、オレはいいからさ、こいつにはポケモンあげてくれよ! 草むらに入ろうとしたのは俺だからさ……」


 何て言ってくれた。わさびは無しにしておこう。


 結局その言葉がきいたのか、二人ともポケモンを貰うことが出来た。俺が貰ったのは、ヒコザルという、お尻の辺りから尻尾のように炎を出している小猿ポケモンだった。ウェーブがかかったトンガリ髪の毛が可愛い。ユキムラはポッチャマという、くりっとした目がたまらないペンギンポケモンを貰っていた。


 分らないことがあったら聞きに来なさい、と言い残して、ナナカマド博士はヒカリちゃんという助手のような女の子を連れて帰っていった。


 その後、ユキムラが勝負を挑んできた。嬉しそうに、ポケモン勝負だぁ、と叫んでいたが、嬉々として戦いを仕掛けるのはどうかと思う。その気迫が勝ったのか、ユキムラに負けてしまった。その事をまだ引きずっているのか、俺が日記を書いている今も、ヒコザルはクッションの上で丸くなっている。負けず嫌いなようだ。


 母さんは、意外にあっさりとポケモンを手に入れたことを喜んでくれた。ヒコザルの傷の手当ても母さんがしてくれた。俺がしようとすると、ひっかくぐらい嫌がったのに……納得できない。おかげで俺も傷薬を使うはめになった。





 明日はナナカマド博士にお礼しに行こうと思う。









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