街灯が夜を照らす中、僕は一人で白黒の道を歩いていく。目的地は小次郎の家。彼の顔合わせ兼力試しを行う場所である世界樹前広場まで、まだ完全に地理を把握していないだろう小次郎を案内するためだ。近い内使い方とあわせて、小次郎に地図を渡した方がいいかもしれない。


 小次郎の住んでいる家は、明日菜君たちが住んでいる女子寮の割と近くにあったりする。徒歩で約十分という短い時間で、どことなくこの距離の家を選んだ事に、学園長の何らかの意図が見え隠れするのは僕の気のせいなんだろうか? そうであって欲しいと願うけど、そこで断言できないのが学園長の怖いところだ。


 道の途中でどうやっても視界に入る女子寮を横目に見ながら、右手をポケットに入れて歩を進める。程なくして、麻帆良の中では異質な部類になる武家屋敷に到着した。インターホンを押し、この家の主を呼び出す。


「何方かな―――おお、タカミチではないか。一体どうしたのだ?」


 陣羽織こそ脱いでいるもののいつもの着物姿で、小次郎が顔を出してきた。


「いや、もう少しで君の顔合わせだろ? 道が分からないだろうと思って来たんだけど」


「それはありがたい。丁度それで思い悩んでいてな、エヴァ達にでも頼もうと思っていたところよ。あぁ、少し上がってゆかぬか? 時間はまだあろう」


「いいね。じゃあ、遠慮なく」


 小次郎からの嬉しい誘いに乗って敷居を跨ぐ。鹿威しの音に耳を傾けながら板張りの縁側を歩き、居間に到着した。新調されたばかりの畳の匂いが、どこか心を落ち着けてくれる。部屋の隅に重ねられていた座布団を手に取り、その上に胡坐をかいて座った。


「そら、茶と菓子だ。運が良かったなタカミチ。それが丁度最後だったのだぞ」


 僕の前に湯飲みとお皿を差し出して、小次郎は僕の向かいに腰を下ろした。湯のみの中には緑茶が入っていて、皿には三切れほどの羊羹が乗っかっている。先日エヴァンジェリンたちと町に行ったときに一緒に購入した物だろう。ありがとう、と礼を言ってから湯飲みに口をつける。


「…………ふぅ」


 無意識に吐息が口をついた。甘みと苦味が丁度いいバランスで口の中に広がり、喉を通って胃に落ちた緑茶が体を中から温めてくれる。湯気と共に立ち上る香りも重なり人を―――特に日本人の血が流れる僕の心を落ち着けるには十分すぎるほど、このお茶は美味しかった。


 羊羹に手を伸ばす。適度な大きさに切り取って口に入れると、途端に舌に広がる深く濃い甘み。だがそれはしつこいものではなく、羊羹が口から消える頃には適度な甘さだけをそこに残してくれる。その状態で飲む緑茶は、先ほどに勝って美味しかった。


「随分美味いなぁ、これ。こんなに美味しいお茶と羊羹は久しぶりに食べたよ」


「当然であろう、それは茶々丸が薦めてくれた物だ。エヴァ御用達の品物らしいが、あの茶々丸が選ぶ物に間違いがあるはずなかろうよ」


 僕とは違いお茶だけを啜っている小次郎がそんな説明をしてくれた。なるほど、日本贔屓である上美食家なふしがあるエヴァ御用達の品物なら、この味にも納得できる。普段では中々味わえない味に舌鼓を打っていると、三切れの羊羹はあっという間に無くなってしまった。


「茶のお代わりはいるか?」


「欲しい―――と言いたいところだけど、そろそろ出た方がいい時間だからね。直ぐに行けるかい?」


「無論。用意をしてくるので、先に玄関に行っていてくれ」


 僕の言葉に素早い返事をしながら、小次郎が立ち上がった。それに続き僕も腰を上げて、玄関へ向かう。先に靴を履いて小次郎を待っていると、程なくして戦闘準備を整えた小次郎がやってきた。草鞋を履いて、背中に愛刀・備中青江を差した小次郎と一緒に家を出た。


「さて、ここから広場まではちょっとかかるけど、今の時間なら遅刻って事はまずないからのんびり歩いて行こうか」


「承知した。道案内宜しく頼む」


 任せてくれ、と言いながら歩みを始める。ここから世界樹前広場まで約四、五十分と言ったところだろう。その間無言というのも気が引けるので、いくらか歩いたところで話題を振ってみた。


「知っての通りこれから他の警備員たちと顔を合わせるわけだけど、どうだい? 緊張とかはしてないかい?」


「はは、それは無用な心配というものよ。昔から自分でも驚くほど肝は据わっていてな、よほどの事でも驚いた記憶はない」


「頼もしいねぇ。そういえば今日、エヴァから君の戦いの様子を聞いたよ。凄いじゃないか、あのエヴァが絶賛してたよ。『小次郎以上の剣士を私は見た事がない』ってさ」


 その話を聞いたのは、今日の放課後。特にやる事も無く顧問を勤めている美術部も掃除の関係で休みだったので、エヴァに会うために茶道部に顔を出したとき、ふとエヴァが小次郎の戦いを知っているという事を思い出して聞いてみた。エヴァが他人の事を純粋に褒めているのは初めて見た。それだけで、小次郎が剣士としてどれほど逸脱しているのかが分かる。


 因みに、『隙あらば従者にしてみたい』と言っていたのは伏せておく事にした。


「ほう、それは何とも喜ばしいな。だがエヴァは見たところまだ十前後であろう? その様な幼子に褒められても、な」


 ――――――そうか。エヴァ、まだ言ってないのか。言ってしまおうかとも一瞬思ったが本人が言ってないんだ、やはり僕から言っていい事ではないだろう。


 それにしても今の台詞……本人が聞いたらと思うとゾッとするね。こう、死の兆しが頭上の夜空に輝きそうだよ。本気で。


「そういえば、今宵は顔合わせと力試しを兼ねての会合とのことだが、力試しとは具体的にどういったことをすれば良いのだ?」


 と、今度は小次郎から質問が投げかけられた。


「別にこれと言って特別な事はないよ。ただ他の警備員―――魔法先生や魔法生徒に、君の戦いぶりを見せればいいだけなんだからさ」


「―――ほう。つまり今宵、これから死合があると、そういうことか」


「若干言葉のニュアンスが違う気がしないでもないけど、まぁそういう事さ。君にはおあつらえ向きだろ?」


 僕の返答に、然り、何て古めかしい答えをくれる小次郎。それに苦笑いを浮かべながら、夜の道を男二人で歩いていく。小次郎はあまり口数が多い方じゃないのか、これ以降は特に何を話す事もなく、そのまま世界樹前広場に到着した。


「ほほ、来たようじゃの」


 真っ先に気付いた学園長の言葉を聞きながら階段を上り、踊り場に向かう。その途中で、誰が来ているのかを確認してみた。


 まず、学園長。魔法先生は刀子先生、神多羅木先生、ガンドルフィーニ先生、シャークティ先生、瀬流彦先生、弐集院先生と僕を含めた七名。魔法生徒は高音君、佐倉君、夏目君の三名。そして妖怪の討伐依頼をよく受けてくれている桜咲君と龍宮君の二人に、エヴァと茶々丸君を合わせた計十五名。当日召集にしては集まった方だろう。


「学園長、小次郎を連れてきました」


「うむ、ご苦労じゃったの」


 そう言って魔法先生及び魔法生徒、そしてそれに類する人たちの中から学園長が歩み出て、こちらに向かってきた。それと入れ替わりになるように僕も歩いていき、小次郎を学園長に任せ一群に入る。


 そして、学園長による小次郎の紹介が始まった。


「急な召集によく集まってくれた皆の衆、感謝しとる。メールで通達していた通り、彼を先日新しい警備員として雇った。知っている者も何人かおるかも知れんが、紹介しよう。佐々木 小次郎君じゃ」


 学園長の言葉に、小次郎が静かに一歩を踏み出す。それだけで、何人かは彼の実力の一端を垣間見たようだ。実際僕も初見は驚いた。ここまで自然な歩き方を出来る人物が、実際にこの世にいたなんて、と。


「今学園長殿が紹介した通り、名を佐々木 小次郎と言う。学園長殿とは父上が旧知の間柄故、それを頼ってこの麻帆良に職を求めにきた者だ。その甲斐あって、剣道部のこーちとこの警備員の仕事を仰せ付かることができた。どうか以後、よろしく頼む」


 そう簡単に挨拶をし、優雅に頭を垂れる小次郎。その言葉の続きを、学園長が紡いでいく。


「今の話に疑問を抱いた者も多いと思うが、これは紛れも無い真実じゃ。
 ―――表向き、という事柄を除けばの」


「表向き? それは、どういう事ですか学園長」


 学園長の言葉に不審の声が上がる。声の主はガンドルフィーニ先生。礼節を重んじる黒人の魔法先生なんだけど、堅物すぎるのが玉に傷だ。他の先生や生徒たちを見てみれば、その表情には同じような内心が現れていた。


「率直に言おう。小次郎君は、この世界の人間ではない」


 その発言の後、先日学園長室で小次郎が話した内容をそっくりそのまま学園長が話していった。


「…………以上が、小次郎君がこの世界に来た経緯と異世界の者という理由じゃ。何か質問はあるかの」


 学園長が確認を取ると、静かに手を挙げた人が一人。高音・D・グッドマン君。魔法生徒の中では上位に位置する実力者だ。ただ魔法世界で育ったせいか、良くも悪くも真っ直ぐな子でもある。視線を向け、それだけで学園長がその先を促した。


「…………色々と信じられない箇所はありますが、それでも学園長先生は彼―――小次郎さんを信じるのですね?」


「うむ、その通りじゃ」


「でしたら、私から言う事は何もありません。佐々木 小次郎さん、これからよろしくお願いします」


 そう言って、高音君が小次郎に一礼する。それを見て高音君の隣にいた佐倉 愛衣君と夏目 萌君も同じく頭を下げた。それからまた学園長が質問の確認を取ったが、学園長の一言が効いたのか他には何もなかった。


 しかし、『学園長が信じているから』か。小次郎の人柄を少しだが知っている僕としては、早く小次郎自身が信頼を勝ち取って欲しいと考えてしまう。頑張ってくれよ、と心の中で激励の言葉を贈った。


「では、小次郎君の顔合わせはこれで終了じゃ。続いて、小次郎君の実力を見るための試合を行おうと思う。相手は…………そうじゃな、高畑君、お願いできるかの」


 こちらに顔を向けて、学園長がそんなことを言って来た。勿論異論は無い。元々小次郎とはいつか戦いたいと思ってたので、この話はまさに渡りに船という奴だろう。


 ―――だが、


「すいませんが学園長、この場で小次郎と戦うのに相応しいのは僕じゃありませんよ」


「ほ? それはまた、どうしてじゃ?」


「餅は餅屋に任せればいいんです。この意味、学園長なら直ぐに分かると思いますが」


 視線をある人に向けながら、学園長に進言する。本音を言うと小次郎とはすぐさま戦いたいが、今日の試合の趣旨は『小次郎の実力を見る』だ。僕と戦っては、小次郎の実力の全てを見るのは難しい。だからこそ、あの人ならば正確に小次郎の力を見抜けるだろう。


「そういう訳で、刀子先生。僕の代わりに小次郎の試合の相手を勤めていただけませんか?」


 葛葉 刀子先生。神鳴流の剣士であり、その剣の腕前は現在の麻帆良で最強の女性。そんな彼女に、僕の代役を依頼する。学園長もそれに納得したのか、特に僕を止めずに刀子先生を見ている。


「―――分かりました。高畑先生の代わりを勤められるとは思えませんが、彼の実力には私個人としても興味はありましたし、お受けいたします」


 何の異論もなく代役を引き受けてくれた刀子先生。長い髪を夜風になびかせながら、静かに小次郎に向かって歩を進める。残った人たちは二人が心置きなく戦えるよう、踊り場の更に上段にあるもう一つの踊り場に移動するため、左右にある階段を上っていく。


「おい、葛葉 刀子」


 その途中、今まで終始無言だったエヴァが口を開いた。突然の発言、そしてそれがエヴァという事で、この場にある全ての視線がそちらに向かった。


「何ですか、エヴァンジェリン」


「精々、揉まれてこい。それだけだ。小次郎、少しは手加減をしてやれよ」


「それは無理な相談というものだぞエヴァ。一見したところ刀子殿は中々の手練故、私としては手を抜かず全力で果たし合いたい」


「そうか。ならばなるべく長引かせろ。貴様の剣は、金を払ってでも見る価値があるからな。それに、呆気なく終わっても詰まらん」


「承知。他ならぬ其方の頼みだ、善処しよう」


 期待しているぞ、と最後に告げてエヴァも階段を上り始めた。そういえば小次郎の戦いの話を聞いたとき『この六百年色々な剣士とも戦ったが、技量に関してなら奴はその中でも頂点に君臨する』とも言っていたっけ。


 小次郎がその背から鞘を外して刀を抜き、鞘を踊り場の隅に置いた。五尺余りという規格外の長刀を右手に持ち、ダラリと両手を下げた自然体に構えを取る。一見すると隙だらけにしか見えないが、それも構えているのが小次郎というだけで全く真逆のものになってしまっていた。涼やかな視線は鋭く優雅に、そしてしっかりと刀子先生を捕らえている。


 刀子先生も刀を抜いた。小次郎とは違い、その長さは標準よりやや長い程度。だが違うのは鞘を腰に差したり床に置いたりせず、刀を持っている手とは逆の左手に未だ持っているという事。刀と鞘の二刀流。それが、刀子先生が使う型の一つだからだ。


「…………どういう事です? 昨日今日来たばかりの貴方が、何故あのエヴァンジェリンと親しげに会話を?」


「何、こちらに来て一番に会話をしたのがエヴァ達であるだけよ。他に理由などない」


「そうですか。しかし、佐々木 小次郎―――貴方がその名に相応しい実力を持っているかどうか、試させて頂きます」


 五メートルほどの距離を置き対峙する二人を、上部の踊り場から見下ろす。先ほどのエヴァの発言のせいかは知らないが、刀子先生は既に少量の殺気を放っている。


 だが、小次郎にそれは全く通用していなかった。それどころか凶器を持っているにも関わらず、小次郎は微塵の殺気も発していなかった。その佇まいは普段のそれだ。凶器をその手に握っていながらいつもの状態を保つなんて、一体小次郎はどれほどの時間をあの刀と過ごしてきたと言うんだろう。


 街灯と月明かりが、二人を照らす。聞こえるのはやや弱く吹く風と、期待に高鳴っている自分の心音と息遣いだけ。他の魔法先生たちも須らく同じなのか、一段下の二人を食い入るように見つめている。


 曇天の空の下、舞台は整った。観客もいる。後は、開演の合図を待つだけ。


「――――――神鳴流剣士、葛葉 刀子。剣士、佐々木 小次郎に試合を申し込みます」


 剣士としての血がそうさせたのか、珍しく刀子先生がそんな前口上を口にする。それを聞いて一瞬呆けた顔になるが、直ぐに心底嬉しそうな顔になって、口の端を吊り上げる小次郎。彼にしてみれば、このやり取りもまた、夢にまで見た事の一つなんだろう。


「――――――我流剣士、佐々木 小次郎。御相手仕る」


 答えた瞬間、小次郎が殺気を解き放った。向かう先は首。それは面としてぶつけて相手を萎縮させるのではなく、ただ一心に首を落とすという事を相手に宣言するためのものだった。


 まるで刀の切っ先のような殺気。その純粋さに、僕は息を飲んだ。あそこまで殺気を凝縮できるのも凄いし、何よりあんなに混じり気のない殺気なんてそれだけでもっと恐ろしい。


「いざ―――」


 刀子先生の姿勢が沈む。全身に気を巡らせて、戦いの準備を完了させている。


「―――尋常に」


 小次郎は変わらない。ただそこに立つだけで、全ての用意を終わらせている。


 そして―――









 ――――――勝負――――――









 幕が、上がった。











 先手を取ったのは葛葉 刀子。麻帆良最強の剣士と名高い、神鳴流の剣士。瞬動を用いない通常の疾走で、小次郎の実力を測るための逆袈裟を放つ。試しの一太刀であろうとも、その速度が容易く受けられる物でないのは明白であった。


 それを見てから数瞬の間を置き、小次郎の刀が動く。直線を超える速度の円を描き、その滑らかさを利用して刀子の一太刀を受け流した。そして返す刀で、刀子の首を落とそうと銀光を奔らせた。その一太刀に躊躇いはなく、避け損なえば、刀子の命はそれまでだろう。


「―――はっ!」


 無論、その程度を受けられない刀子ではない。受け流された刀をすぐさま切り返して小次郎の攻撃を防ぎ、左手に持った鞘で鳩尾に突きを放つ。それを真半身になる事でギリギリ避けた小次郎は、再び首にその刀を放った。一文字に迫る刀を刀子は伏せる事で回避し、がら空きとなった左胴に向けて一太刀を向ける。


 だが、それよりも小次郎は速かった。刀を振りぬいた姿勢のまま一歩後退し、刀子の間合いの僅か外に離脱する。そしてその瞬間、鋭角に軌道を反転させた小次郎の刀が同じく無防備となった刀子の首に、その牙を突き立てようと高速で空気を裂いて行った。その攻防一体の動きに驚きを感じながらも、小次郎の太刀を受け流しつつ刀子も後退した。


 距離が開き、戦いに刹那の静寂が落ちる。その間を使い、刀子が小次郎に言葉をかける。


「なるほど、素晴らしい剣の腕です。正直、最後の太刀の鋭さには肝を冷やしましたよ」


「そう言う其方こそ大した腕ではないか。女でありながらそれほどの高みに立てるとは…………いや、その才には感服を禁じえぬ。加えて打ち込みも素晴らしい。女の体でこれほどとは、さぞ鍛え抜かれた全身なのであろうよ」


 無表情のまま褒め称える刀子と、優雅に片目を閉じて口の端を吊り上げながら余裕気に評価をする小次郎。その間にも二人は気を緩める事無く、互いに互いの隙を探り合っていた。


「―――ふむ、凄いな。あの葛葉と渡り合うとは」


 二人の戦いを見て、タバコを口に咥えた髭とサングラスが特徴的なオールバックの男―――神多羅木がそう呟いた。仕事で刀子と行動を共にする事が多い彼は、同時に刀子の実力も熟知している。それ故、たった三合ではあるが刀子と渡り合った小次郎の実力を、神多羅木はにわかに信じられなかった。


「そうだね。まだ早々ではあるけど、彼の実力は少なく見積もっても葛葉先生クラスと見て間違いないだろう」


 神多羅木の隣に立っていたガンドルフィーニも、その意見に同意した。ナイフを用いた接近戦を少なからずこなすガンドルフィーニもまた、小次郎の太刀筋に寒気を覚えたのだ。言葉にこそ出してはいないが、この場にいる全員の心境は同意だった。


 再び、刀子が爆ぜる。先ほどの踏み込みを上回る速度で小次郎に迫る。


 しかし、攻撃の先手は小次郎だった。五尺という長刀は、刀子を間合いの内に易々と受け入れはしない。


「ふっ―――!」


 だが刀子も然る者、潜り抜けてきた死線の数は伊達ではない。左手に持った鞘で小次郎の刀の腹を叩いて軌道をずらし、そこに体を滑り込ませる事によって小次郎の間合いを侵略する。


『貰った!』


 この千載一遇の機会を逃す刀子ではない。間髪入れずに右手の刀を奔らせ―――


「―――シッ!」


 それよりも疾く返って来た長刀に、その一撃を阻まれた。


「くっ―――はあぁぁぁぁ!」


「じゃっ―――!」


 幾度も打ち合わされる鋼。それらがかき鳴らす鋼鉄の協和音が、夜空に溶けるように鳴り渡る。


 唐竹に落とした刀子の太刀を小次郎は受け流し、切り替えしの太刀を同じく刀子が受け流す。肋骨を砕く勢いで打った鞘は後退する事により避けられ、そのまま放たれた首狩りを弾いて回避した。踏み込みながらの刺突は撫でるように逸らされ、返礼とばかりに首に奔る一条の光は横にずれる事で捌いた。


 美しい殺陣が繰り広げられてる。打ち合った数は優に三十を超え、それでも尚決着の兆しは見えて来ない。それは偏に両者の実力が互角なのか、はたまたエヴァンジェリンが言ったとおり小次郎が手を抜いているからか。それは、第三者が理解できる事ではない。


 明確な事実は一つ。この戦いは、まだ終わらないという事だけだ。


「うわ…………本当に凄いな、彼。刀の切っ先が全然見えないよ」


 普段は柔和な笑みを浮かべている瀬流彦も、今だけはそのなりを潜めて真剣な眼差しで二人の間を凝視している。武芸の心得がない瀬流彦から見ても明らかなほど、小次郎の剣は速かった。


「龍宮…………お前の『眼』で、あの人の剣を捉える事は出来るか?」


「あの剣速なら何とか、な。ただそれも、こうして端から見ていればの話で、正面から向かい合ったとすると、完全には無理だろう。それに恐らくあの人は本気を出していない。いや、学園長も凄まじい人を雇ったものだな」


 既に小次郎の剣を受けている刹那からの問いを受けて、ルームメイトである龍宮 真名がそう答えた。魔眼と呼ばれるものを所持している龍宮は、常人に比べて色々と眼が利く。加えて龍宮はその若さにも関わらず、数多の戦場も潜り抜けている。それ故、そういった諸々を合わせた龍宮の目利きの正確性を知っている刹那は『完全には無理』という答えに驚きを感じるが、経験者としてそれと同じかやや多く納得もしていた。


「――――――なるほど。エヴァ、君が絶賛する訳だ。彼は間違いなく、剣士としては最強だよ」


 両の手をポケットに入れたまま、エヴァの近くで戦いを観戦していたタカミチが納得したように言葉を発した。それに対し、刀子と同じく神鳴流剣士である刹那が疑問の声を上げた。


「それはどういう事ですか、高畑先生。確かに小次郎さんの剣の腕前は凄いですが、『最強』かどうかと言われると―――」


「おや? 刹那君が気付かないなんて意外だね。よく小次郎を探ってごらん、答えは直ぐに出るよ」


 顎で戦場を指す事で、タカミチが刹那を促した。それに従いもう一度戦場に視線をやり、小次郎を注視した刹那は、ある一つの事柄に気付いた。


「――――――気を、使ってない?」


 刹那の呟きに、魔法先生と生徒の全員が小次郎を見やる。


 全身はもとより得物にまで気を通わせた刀子が薙ぎを放つ。それによって身体能力は向上し、刀は切れ味を増すからだ。今までの全ての戦いを、刀子はこうして勝ち続けてきた。


 小次郎がその一撃を容易く受け流し、疾風の太刀で首を狙う。当然、その全身にも得物にも気は通っていない。元々小次郎はこの世界の人間ではないのだから、こちらのルールである『気』を使えないのは至極当然の事だ。ましてや小次郎は一介の百姓生まれ、そんな神秘を有しているはずもない。


 それでも小次郎は、神鳴流でも上位に位置する力を持つ葛葉 刀子と渡り合い、未だ刀を切り結んでいる。戦いを傍観している者で、エヴァンジェリンと茶々丸を除く者は、事ここに至り理解した。


 ―――この男は、こと剣に関してならば他の追随を許さない、と。


 刀子が再び小次郎から後退する。それは距離を取るための後退ではなく、距離を取らなければならないための逃走だった。その表情には、玉のような汗が幾つか浮かんでいる。


『―――何て、速さ』


 僅かに息を切らせながら、刀子は戦慄する。小次郎は、あらゆる動作が速すぎるのだ。


 刀の振り―――あれほどの長刀でありながら見惚れるほど美しい円を描き、且つ気を使っている自分の太刀より尚速い。


 体捌き―――自分が動いた瞬間には、既にそれに相応しい場所に立っている。


 反応―――未来予知でもしているのかと思うほど正確で、そして速い。


 判断―――一歩間違えば即ち死である戦いの中、自身にとって最短最適を常に選び取っている。


 それは恐らく、高畑先生から見ても最高クラスの速さだろうと、刀子は見ている。だがそれも、あくまで『一般人の範疇』の話だ。


 『気』を扱えない小次郎は、どうしても使える力が『一般人』のカテゴリーに類してしまう。根本的な身体能力の話をするのであれば、小次郎はここにいる誰よりも勝っているだろうが、『気』を使えないというたった一つの要因のせいで、他に大きな後れを取っている。これだけは、紛れもない事実だ。


 加えて、小次郎の得物は規格外の長刀だ。確かに得物の長さはそのまま強さに繋がりやすいが、小次郎の刀は度が過ぎている。これだけ長ければ重さも相当なものになり、そのせいで振りの速さも遅くなってしまう。普通に考えれば刀子の刀の方が振りは断然速いだろうし、更に刀子の技量であれば、一度捌けば懐に侵入するのも容易だろう。


『…………だと、言うのに』


 だがそれでも、小次郎は速すぎる。正直に言えば、未だ自分の首がついている事を刀子は信じられなかった。恐らく、これが本当の殺し合いであれば、この首はとっくの昔に飛んでいただろう。


 懐への侵入も幾度と無く試みた。だがその全ては失敗に終わる。刀を払い、踏み込んで刀を振るおうとすれば、その瞬間に刀が首に迫ってきているのだ。


 勿論、神鳴流の技を使えば刀子にも勝機はあるだろう。特に雷鳴剣は、魔力や気を使えない小次郎では防ぐ事叶わぬ技だ。当然刀子はそれを理解し、放つ機会を常時窺っていた。


 しかし、結局その時は訪れなかった。雷鳴剣は、放つのに気を使って剣に帯電させる必要がある。並大抵の相手であれば打ち合っている最中にでも使えただろうが、この男にそれは致命的な隙にしかならないと、刀子は思い知る事になった。帯電させようと剣に気を込め始めれば、その瞬間には刀が首に奔っているのだから。無論、他のどんな技も例外ではない。


 そして、刀子は思い至った。小次郎の強さと速さの秘密に。


 小次郎の動作には、無駄と前動作がほぼ皆無なのだ。円を描くための最短を最速で、かつ初速から全速で進んでくるのなら、なるほど『一般人の範疇』であろうと気を付与した『超常の者』に迫る事も出来よう。


 加えて何よりも超常との差を埋めているのは、小次郎自身の技量。力による速度だけに頼らず、技によって生まれる疾さを持って小次郎は剣を振るい、戦っている。それは、唯の一人すら寄せ付けない圧倒的技量を持つ小次郎だからこそ可能な離れ業。あらゆる事を『技』で成し遂げられるその技量は、到底人間が持ちえるものではなかった。


 剣神。それが、刀子の小次郎に対する評価だった。


「―――ふむ」


 刀子とは対照的に涼しい顔で、息一つ乱していない小次郎がそう呟いた。幾度か足で地を蹴り、左右への移動を繰り返している。それは、まるで何かを確かめるような動作にも見えた。


「刀子殿」


「…………何でしょう」


 訝しみながらも刀子が返事をすると、小次郎は視線を天に外した。釣られて、全員が空を見る。


「―――興が乗ってきたところで、月も出たのだ。もう良い頃合であろう。そろそろ、手加減をやめては如何かな?」


 雲の隙間から顔を覗かせた月を見ながら、何の脈拍も無く小次郎がそう告げた。その表情と声に普段の優雅さは無く、一人の剣客がそこに立っているのみだ。


「…………なぜ、そう思うのですか?」


「何、単なる勘だ。何処と無く、其方の動きに違和感を感じた。特に走りだ。全力ではあろうが、使えるものを使い切っておらぬように見えてな。恐らく、何らかの歩法を隠しているのであろう?」


 小次郎の片目が、刀子を正確に射抜く。その視線はあくまで涼やかだが、刀子は極北の烈風のような寒気を覚えてしまった。


「―――いいでしょう。貴方の望み通り、本気で行きます」


「それで良い。ああ、無論私が誘ったのだ、こちらも相応しいものを出そう。ただ少々古びているもので上手く出せるかは分からぬ上、名も無きしがないものだ。錆び落としは十分に行ったが…………さて、其方と釣り合いが取れるものか」


 両目を閉じて薄く笑い、構えなき構えを取る小次郎。そして小次郎に宣言した通り、己の全力を発揮するために鞘を腰に差してから刀子も構えを取った。


 弱く吹いている風の音が聞こえる。それほどに場が静まり返る中、刀子が音も無く気を足元に集中させていく。瞬動と呼ばれる歩法であるそれは気、ないし魔力を足元で爆発させ、その推進力を持って瞬間移動する技法だ。錬度が上がれば上がるほどその前後に隙は無くなり、頂点を極めれば本当に消えたようにしか見えなくなる。そして刀子の瞬動は、極めてそれに近いものであった。


 刀子の体がぶれて、消える。突然のそれに小次郎の眼が見開かれるが、その時には刀子は既に小次郎の横へと回っていた。放たれる一撃は、肋骨への柄尻による打突。左腕が邪魔をしているが、それもどければ問題は無い。そして何より、あの小次郎がまだ刀子に気付いていなかった。


『取った―――!』


 勝利を確信する刀子。上部の観客席から見ている他の者たちも、それを信じて疑わなかった。


 左手が伸ばされる。これが小次郎の左腕を掴めば、そこで刀子の勝利は確定し、小次郎の敗北は必定となるだろう。


 勝利を目の前にしながらも、逸る気持ちを押さえ、どこまでも冷静なまま刀子は手を伸ばし―――







 ――――――刹那、その勝利が掻き消えた。







「なっ!」


 勝利ではなく虚空を掴んだ左手の感触に、刀子が驚愕の声を上げる。自分の目と感覚がおかしくなければ、今のは瞬動どころか、それに更に武術の歩法を加えた瞬動の完成形である―――


『縮地!? まさか、今まで気を使わなかったのは、この時の為に―――!』


「刀子さん!」


 あまりの事に一瞬自分を見失っていた刀子に、手すりから身を乗り出しながら叫んだ刹那の声が届く。その声に打たれて正気を取り戻した途端、訳も無く悪寒を感じて瞬動を放った。入りも抜きも関係ない、ただ、逃げるためだけの瞬動。案の定、抜きが定まらず二転三転と地を転がってしまった。だがそれも、今の刀子には関係ない事だ。


 起き上がり様にほんの数瞬前まで自分がいた場所を見れば、刀を振り切った体勢の小次郎の姿があった。その軌跡を辿れば、首があった位置を通ったのは明白だろう。流石に、刃と峰は返していたようだが。


「…………うむ、やはり久方ぶりに使ってはこの程度か。いや、真に私も修練が足りぬな」


 やれやれ、と言った風に肩を竦め、小次郎が自嘲の笑みを浮かべる。それを見ながら、刀子が無意識に首に触れる。果たしてそこに、首はあってくれた。


「……驚きました。まさか、縮地を使えたなんて。この私が何の気配も感じられないなんて、恐ろしいほど錬度の高い縮地ですね」


「縮地……? いや、私の話を聞いていなかったのか? これは名前など無い技―――否、技ですらないものよ」


 小次郎の発言に、全員が度肝を抜かれる。今の移動は間違いなく縮地である、それがこの場にいる者達の総意だからだ。


 一部を除いて。


「エヴァ、茶々丸、タカミチ。其方らならば、今のがどういった代物か理解できたのではないか?」


 視線を観客にやり、知り合いである三名の名を挙げる小次郎。その一部に視線が集まり、最初に茶々丸が口を開いた。


「はい。今小次郎さんが移動した際、気も魔力も感知できませんでした。あれは私たちの言う縮地でも、瞬動でもありません」


「そうだな。恐らく、純粋な歩法といったところだろう。詳細は―――タカミチ、貴様が説明しろ」


「…………正直、僕もよくは分からないけど、見た感じをそのまま言うのなら『最速で一歩歩いた』ってところかな」


「如何にも。正しくその通りよ」


 流石はタカミチ、と小次郎が賛辞の言葉を送る中、その歩法を編み出した本人がその詳細を語っていく。


「燕を斬る、という事はな、剣だけが速くても成せぬ業よ。燕とて態々斬られに来るほど酔狂ではないく、殺気を感じて先に飛ぶ方向を変えるやも知れぬ。故に、その逃げた方向に素早く一歩を踏む術は必須であったと言うわけだ。
 もっとも、これは作ろうと思って編み出したものではなく、燕を斬ろうと修練を積んでいる内に自然と完成されたものなのだ。故に名は無く、技ですらないというわけだ」


 そこで言葉を切り、実際にその一歩を小次郎はやってみせる。全くの自然体から無動作で繰り出されたそれは、誰の眼に留まる事も無く一歩を歩いてみせた。


「ふむ…………だが、折角あるというのに名が無いというのも悲しいものよな。誰か良い名を考えてはくれぬか? 無論私も考えるが、三人寄れば文殊の知恵とも言うであろう」


 先ほどまで激戦を繰り広げていたとは思えないほどの軽さで、小次郎がそんな事を言った。誰もがそれに呆然とする中、先の三人だけがそれを了承していた。


「―――学園長」


「なんじゃ、刀子先生」


「もう、十分です。彼は間違いなく、この麻帆良を守る力となってくれるでしょう」


 転んだ時に付いてしまった汚れを軽く払いながら刀子は立ち上がり、そう学園長に報告した。学園長は、フォッフォッフォ、といつもの笑い声を嬉しそうに発した。


「では、皆の者よ。まだ小次郎君に言いたい事はあるかの?」


 それに意見を唱える者は、当然唯の一人もいなかった。


 風で雲が晴れ、煌々と月が照る中。こうして、佐々木 小次郎は麻帆良に受け入れられた。












 世界樹前広場で解散した後、私は迷わずログハウスに向かっている。ついて来ているのは茶々丸、タカミチ、そして小次郎の三人。戦い終わった後の小次郎に話しかけに行った時、いきなり茶々丸が『祝勝会をしましょう』と言ったためだ。最近、茶々丸の性格が変わってきていると思うのは、気のせいであってほしい。


 しかし、二日間連続で宴……か。まぁ、毎日が退屈な私としては別に構わんのだが、教師とコーチという立場にいる後ろの二人は平気なんだろうか?


「おい貴様ら。宴会を開くのは構わんが、明日も学校があるのだぞ。いいのか毎日酒を飲んで」


「はっはっは、生憎酒に飲まれた経験はなくてな、二日酔いになったことはない。心配は無用よ」


「ま、加減して飲むから大丈夫だよ」


「ああそうかい」


 こいつらが酔いつぶれようが寝不足になろうが私としてはどうでもいい事だったので、それだけで話を終えた。


「おお、そうだ。茶々丸、少し良いか?」


「何でしょう、小次郎さん」


 私の後ろで、二人が会話を始めている。なぜかその会話は声が小さく、聞き取る事は出来なかった。


「―――分かりました。手配しておきます」


「忝い。まだ今の時代には慣れていなくてな、これからも色々と頼る事があると思うが、どうかよろしく頼む。代わりに、私も出来うる限り茶々丸の助けをいたそう」


「構いません。小次郎さんは読み書きすら出来ないのですから、どうぞ遠慮なく頼ってください」


 後ろは向いていないのでその表情を窺う事は出来なかったが、茶々丸にしては珍しい言葉が口をついていた。


「おいおい小次郎。僕もエヴァもいるんだから、茶々丸君だけに頼るのはよしなよ。僕たちだって、君の助けなら幾らだって引き受けるからさ。な、エヴァ?」


「む? ま、まぁ、対価次第では考えん事も無いが」


 タカミチにいきなり話を振られたせいで、立ち止まり振り返りながらついそんな返事をしてしまった。まぁこいつはそれなりに気に入っているので、他人よりは安い対価で色々と頼みをきいてやるつもりはあったのだが。


「―――あぁ、本当に忝い。其方らが友人になってくれて、私は幸せ者だ」


 眼を閉じ、いつもの他人を嘲るような笑みではなく、本当に静かで穏やかな笑みを浮かべて、小次郎がそう言った。その言葉には珍しく、心からの暖かい感情が篭っていた。


「―――ふん。そう思うなら今日の宴で私の酌をしろ。私も酒を飲みたくなってきた」


「承知。友の頼みだ、快く受けよう」


「小次郎さん、ご無理はなさらずに。今日の主役は貴方ですから」


「そうだよ。エヴァ、幾ら気に入ってるからって、あまり小次郎をこき使うんじゃないぞ」


「貴様ら揃いも揃って好き勝手言うな!」


 勝手な事を言う馬鹿従者とタカミチに食って掛かろうとするが、はっはっは、と快活に笑いながら小次郎が空中で私を止める。子猫を持つように、片手で首根っこを捕まえて。


「あ、コラ小次郎! 離せこの馬鹿! こいつらは一発殴らねば気が済まん! というかその持ち方は止めろ!」


「何を言う。態々友が殴られるのを傍観する筈がなかろう。このまま運んでやるから大人しくしているがよい炉利絵武亜」


「なんだその腹が立つ上に無理やりな当て字は!!」


 地に足が着かないので、ジタバタと空中で手足を暴れさせて小次郎の手から逃れようとする。だがこの細腕のどこにそんな力があるのか、はっはっは、となおさら小次郎が笑うだけでその腕から逃れられる兆しも見えない。それどころか私が暴れれば暴れるほど、後ろから生暖かい視線が送られている気がする。


「いやー…………アルを思い出すなぁ。懐かしいよ」


「マスター、あんなに楽しそうに…………」


「貴様ら後で覚えていろおぉぉぉ!!」


 夜空に、私の四面楚歌による叫びが響き渡った。















後書き。


 ―――やった。やってしまいましたよオリジナルスキル。逢千 鏡介です。


 ここら辺から好みが分かれるんでしょうね。それでもこれは通します。だって、本当に編み出してそうですもん、この男。


 以下に記載します。



 ????:A
 小次郎が編み出した歩法。短距離を高速で動く事に主眼が置かれている。移動距離は10cmから1m。カウンターとして使うことでその真価を発揮する。ただ距離が短い分、僅かでも使うタイミングを外すとそれが即死に繋がってしまう。速度としては一般人の最高クラス程度だが、小次郎はそれを無動作で行うのと一瞬で最高速に入れるので、それ以上に感じてしまう。



 皆さんのご意見、お待ちしております。名前はこの先で明かされますので、どうかお待ちを。


 何かお気づきの点、また作品へのお言葉は遠慮なく感想版の方へ。意見、酷評、全て受け付けております。


 では。







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